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健康栄養学科 脱プラと食品包装とシャウエッセン〜モノには理由があるのです

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 つい最近、日本ハム株式会社がシャウエッセンの包装を変更したことはご存じでしょうか?この変更が発表された時、「大丈夫だろうか?」「どんなブレイクスルーがあったのか」と感じました。そして、現物を見て色々と結構な衝撃を受けました。
 そもそも、元々のシャウエッセンは窒素ガスを充填した三方ピロー包装を巾着に絞り、それを2個バンドルした形で販売されていました(一部通常ピローもあったと記憶していますが)。そのため、包装内部の空間が大きく量増し商法などと揶揄されるようなこともありましたが、理由があってこのような包装形態を取っていました。
 最大の元凶は不活性ガス充填(CO2かN2か)にあります。この方法には大きく2つの意味があります。1つは製品の酸化防止です。空気は酸素を20%近く含みますが、その酸素を排除することで酸化を防いでいます。そして2つ目の理由が、包装内部の製品の破壊防止です。シャウエッセンは非常に柔らかい羊腸を使用しているお陰であの食感を得ています。そのため、無闇に力を加えると簡単に破れてクレームの元となっています。そのため、遊びの空間を用意してエアークッションを働かせています。
 ただし、ガス充填は大きな欠点があります。包装形態の内圧が高いことにより、袋が破れる破袋(はたい)です。破袋が起きてしまうと、エアークッションも酸化防止も働かなくなるどころか、外気から湿気を通して微生物が入り込む恐れもあり、安全性も確保できなくなります。
 フィルム包装の方法は大きく分けて、3種類に分けられます。この内、最も充填性能が高いのが4方シール、続いて3方シールです。ですが、この両方ともに膨らませることが困難な方法です。そのため、液体のような実体があるものには使えますが、気体のような実体がないものの重点には使うことが困難な方法です。その結果3方ピローを選択しているのですが、ピローはシールが重なる部分が多く、シール漏れが起こりやすい難しい方法でもあります。それでも確実なシールを実施して、巾着に絞って空気を寄せることで、エアークッションを実現しています。

ですが、このままでは破袋の危険性はなくなりません。そこで、バンドルによって、空気の移動に遊びを持たせて、大きな衝撃を受けても中のウィンナーを守りつつ、破袋も防いでいるのです。これは、火災の時などの高所落下救助用マットと似ています。あれも密閉クッションではなく空気を逃がすことで、要救助者を保護するようにしています(密閉クッションだと、おそらく弾かれて危険)。

 このような事情があるので、中々包装変更に踏み切ることができなかったのだと思いますが、今回の包装方法では大きなブレイクスルーを見ることができました。
 変則的なピローで、マチをつけて立体的に膨らみを持たせることで、十分なエアークッションを実現しています。これまでもマチをつけた包装方法はありましたが、耳が出るためフィルムの無駄も大きく、しっかり折り込んでシールする必要があり応用が難しい方法でした。しかし、今回の新しい方法では無駄も少なくなっています。ぜひ現物をお確かめください。
 プラスチック包装というと最近は脱プラと言われ、食品包装も何かと目の敵にされることが多いのですが、メーカーも実は見えない努力をたくさんしています。なぜならば、その削減部分は100%の利益となるからです。
 このようなフィルム包材はロール単位で発注します。フィルムの種類に応じて、一巻きあたりの長さは変わりますが、仮に100 m 20巻が発注単位とし、一個あたりのフィルム長が12 cm だったとします。すると、理想的には発注単位あたり 16,666個の製品を包装可能です。ここで、次回の発注でフィルム長を11.5 cm に減らすことができたとすると、17391個の製品となり725個分の包装資材が浮くこととなり、それが丸々利益につながります。
 実際には、包装機械の調整などいろいろな事情があり、そんな簡単にはいかないのですが、各メーカーともに努力をして今があるというのは知ってほしいと思います。